皮膚科は開業を考える医師に人気の高い診療科です。
厚生労働省によると、皮膚科を標榜する一般診療所は全国に13,185施設あり、全43診療科のなかで内科・小児科・消化器内科(胃腸内科)に次いで4番目に多い施設数です。
令和2年時の12,410施設と比べて775施設増加しており、開業が増えている診療科であることがわかります。
※参照元:厚生労働省┃令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況(P10)
この記事では、皮膚科クリニックの開業資金や平均年収、失敗しやすいパターン、そして開業前に押さえておきたいポイントまで、順を追って解説します。
皮膚科クリニックの開業資金はどれくらい必要?
皮膚科の開業資金は、保険診療中心なら2,000万〜6,000万円程度、美容皮膚科として開業する場合は5,000万〜1億円程度が目安です。
金額が変わる主な要因は、保険診療を中心にするか、美容皮膚科をどこまで取り入れるかです。
保険診療のみであれば、高額な医療機器や広いスペースがなくても開業できる可能性があります。
一方、自由診療を行う美容皮膚科ではレーザー機器などの導入が必要になるため、用意すべき開業資金も多くなります。
金額に幅があるのは、坪数や内装のグレード、美容機器の導入台数によって費用が変わるためです。
保険診療のみであればエキシマレーザーなど最低限の機器で足りますが、美容皮膚科を本格展開する場合はピコレーザーなど1台1,000万円を超える機器が必要になることもあります。
自己資金については、開業資金の2割程度が目安とされています。
残りは金融機関からの融資でまかなうのが一般的です。皮膚科は初期投資が比較的コンパクトなぶん、その点においては融資審査に有利と言えるでしょう。
ただし、海外から個人輸入するタイプの美容医療機器は融資の対象外となる場合もあるため注意が必要です。
皮膚科の開業医は儲からない?
「皮膚科は儲からない」という噂は本当なのでしょうか。
結論から述べると、勤務医と比べて開業医は高い水準の収入があります。
皮膚科の開業医の平均年収は?
厚生労働省の調査によると、皮膚科開業医の平均年収(損益差額)は、令和6年度時点で1,811万円です。
一方で同調査によると勤務医の年収は1,484万5,784円。
ただし、これは全診療科・全年齢の医師の平均であり、皮膚科の勤務医に限定した数字ではない点に注意してください。
開業医と勤務医の年収を単純に比較することはできませんが、皮膚科の個人開業医の損益差額は、勤務医平均を300万円以上上回る水準です。
※参照元:厚生労働省┃第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告-令和7年実施-
保険診療と自由診療の組み合わせで収益しやすさが変わる
では、なぜ「皮膚科は儲からない」という声があるのでしょうか。
その理由は薄利多売のビジネスモデルになりやすいからです。
皮膚科の診療は、大きく「保険診療」と「自由診療」に分かれます。
■ 保険診療:アトピー性皮膚炎・湿疹・水虫・帯状疱疹など
■ 自由診療:シミ取りレーザー・医療脱毛・ヒアルロン酸注入など美容目的の施術
皮膚科の保険診療は、初診料や再診料、処方箋料が中心となるため患者一人あたりの診療単価は低く設定されています。
単価が低いため、利益を出すには1日に多くの患者を診る必要があります。患者が集まらない期間が続くと、人件費や家賃などの固定費が重くのしかかります。
それゆえ、単価の低さをカバーし、より安定した収益基盤を作るために医療脱毛やシミ取りレーザー、ピーリングなどの自由診療(美容皮膚科)を組み合わせるクリニックが増えています。
単価の高い自由診療の導入が必須というわけではありませんが、どこまで取り入れるかは診療方針に合わせて判断しましょう。
皮膚科開業で失敗しやすいパターンと対策
皮膚科開業において、経営が立ち行かなくなるケースにはいくつかの共通点があります。
失敗を未然に防ぐための対策とセットで確認しておきましょう。
立地選定のミス
近隣に強力な競合クリニックがある場所や、ターゲット層(ファミリー層や若い女性など)の導線から外れた場所に開業してしまうパターンです。皮膚科は「通いやすさ」が重視されるため、立地ミスは致命傷になります。
【対策】
診療圏調査を行い、半径500m以内の競合クリニックの数や人口動態を事前に把握しましょう。
希望条件に合う物件が見つかるまで時間がかかることも珍しくないため、コンセプトが固まった段階でできるだけ早く物件探しに着手するのがおすすめです。
なお、メディカルシステムネットワークでは、開業を目指す先生へ向けて無料で診療圏調査を行っています。以下のページからご確認ください。
医療機器に過大投資
開業初期から高額な美容機器を複数導入すると、資金繰りが悪化するリスクがあります。稼働率が上がる前に固定費だけが膨らんでしまうケースです。
高額機器は経営が軌道に乗ってから段階的に導入するほうが、資金効率とリスク管理の両面で合理的です。
【対策】
基本は「スモールスタート」の考え方です。まずは需要の確実な基本機器のみを導入するか、初期費用を抑えられるリース契約を検討しましょう。
開業後、実際のニーズや予約状況を見極め、利益が出始めてから新たな機器を追加導入していくと良いでしょう。
差別化不足
「何でも診ます」という姿勢だけでは、競合の多いエリアで埋もれてしまいます。アトピー治療に強い、小児皮膚科に対応できるなど、明確な強みを打ち出すことが集患につながります。
差別化ができていないと価格競争に巻き込まれやすく、広告費をかけ続けなければ集患できないという消耗戦になりかねません。
【対策】
自院ならではの強み(USP)を明確にし、ホームページやSNS等で積極的に発信しましょう。
「小児皮膚科に力を入れ、キッズスペース完備、ベビーカーの動線あり」
「ニキビ治療に特化し、保険診療と自由診療(ピーリング等)の両面からアプローチ可能」
など、特定のターゲットが「ここに行きたい」と思える明確な理由を作ることが集患のポイントです。
診療時間の設定ミス
女性患者や親子連れの来院が多い皮膚科では、診療終了時間が早すぎると機会損失につながるおそれがあります。
特に学校・仕事帰りの夕方の時間、土日・祝日は需要の多い時間帯。休診が多いクリニックは「行きたいときに開いていない」というイメージがつきやすい点に注意が必要です。
【対策】
ターゲット層の「生活リズム」から逆算して診療時間を設定しましょう。
例えば、ビジネスパーソンや学生がターゲットなら週に2回だけでも19時〜20時までの「夜間診療枠」を設ける、あるいは土日の午前中を開けるといった工夫が有効です。
院長先生お一人での負担が大きい場合は、非常勤医師を採用してシフトを回すという選択肢もあります。
皮膚科を開業する前に知っておきたいこと
ここからは、開業を検討する段階で押さえておきたいポイントを解説します。
立地選定の考え方
診療スタイルによって、適した立地の条件は変わります。
どちらのスタイルを目指すかによって、物件探しの優先順位が変わることを覚えておきましょう。
■ 保険診療中心の場合
・認知されやすい1階の路面店
・生活導線上のスーパーやドラッグストアの近く
・小児科や耳鼻科など親和性が高い科との医療モール
■ 自由診療中心の場合
・ターミナル駅からのアクセス重視
・人目を気にする患者も多いため、あえて空中階にするなどプライバシーに配慮
物件のタイプとしては、複数の診療科や薬局が集まる「医療モール」と、ビルの一角にテナントを構える「ビル診」などがあります。
医療モールは集患で有利な立地に建てられていることが多く、開業当初から一定の来院数が見込みやすいのがメリットです。
一方でビル診は交通アクセスに優れた物件が多く、自由診療の集患を狙う場合との相性がよい傾向にあります。
女性患者を意識したクリニック設計
自由診療で行う美容皮膚科は、女性のニーズが高い科目です。そのため、女性目線を意識した設計やサービスが集患に直結します。
パウダールームの設置やコットン・化粧水などのアメニティの充実は、施術後のメイク直しをしやすくし、患者満足度の向上につながります。
また、デリケートな悩みを相談する場面もあるため、待合室のレイアウトや目隠しといった配慮も必要です。
子連れの女性が利用しやすいようトイレのスペースを広めに確保する、キッズスペースを設置するといった工夫も意識しましょう。
概算経費制度(社会保険診療報酬の所得計算の特例)について
概算経費制度とは、実際に使った経費の額に関わらず、保険診療報酬に一定の経費率をかけた金額を経費にできる制度です。実額経費と概算経費のどちらか多い方を選べる制度で、条件を満たせば節税につながる可能性があります。
適用できるのは、社会保険診療報酬が年間5,000万円以下、かつ医業・歯科医業から生じる総収入金額が7,000万円以下の場合です。
事前の届出は不要で、確定申告のタイミングでどちらを使うか選択できます。
ただし、自由診療の所得がある場合、青色申告特別控除(65万円)は自由診療の所得分からしか控除できない点には注意が必要です。
適用条件や有利・不利の判断は個々の状況によって異なるため、実際に活用できるかどうかは専門家に確認しながら進めることをおすすめします。
勤務医を辞めるタイミングの考え方
退職のタイミングは、開業準備にかかる期間(2年程度が目安)から逆算して決めるのが基本です。
特に物件探しと融資審査は想定より時間がかかることが多いため、在職中から情報収集や資金計画を進め、退職と開業準備が同時進行にならないよう調整することをおすすめします。
開業までのスケジュールについては、以下の記事で詳しく紹介していますのでご確認ください。
★関連記事:クリニック開業の手続き・スケジュールを解説┃2026年改正の注意点も紹介
医療広告ガイドラインへの対応
自由診療を取り入れる場合、必ず押さえておきたいのが医療広告ガイドラインです。
2018年の法改正以降、クリニックのホームページも規制の対象となっています。
ビフォーアフター写真の掲載ルール
ビフォーアフター写真は、治療内容や費用、リスク・副作用に関する情報を併記すれば掲載できます。
掲載自体が一律禁止というわけではありませんが、情報を併記せずに掲載するとガイドライン違反となります。
体験談・口コミの扱い
患者の体験談を自院のホームページに掲載することは、原則として禁止されています。
第三者が運営する口コミサイトへの投稿は規制の対象外ですが、自院サイトへの誘導のしかたによっては問題視されることもあるため注意が必要です。
誇大・比較優良表現の禁止
「絶対に治る」「地域No.1」といった根拠のない誇大表現や比較優良広告は禁止されています。
広告代理店に制作を依頼する場合も、最終的な内容は開設者自身が確認する意識を持っておきましょう。
違反した場合のペナルティ
中止命令や是正命令に従わなかった場合、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
違反事例は公表されることもあり、「知らなかった」では済まされないため注意が必要です。
※参照元:e-GOV法令検索┃医療法 第87条
広告を出す前にできる対策
広告トラブルを防ぐには、公開前のチェック体制を作っておくことが大切です。
■ ガイドラインの最新版を必ず確認する
■ 広告代理店やホームページ制作会社との契約時に、ガイドライン遵守を明記しておく
■ 公開前に第三者の目でチェックしてもらう体制を作る
こうした対策は手間に感じるかもしれませんが、後から広告を修正・削除する手間や、行政指導を受けるリスクを考えると、開業準備の段階でルールを押さえておくほうが結果的に効率的です。
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開業後も、健康セミナーや講演会の開催支援など、集患・増患につながる企画を提案します。
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複数の医療機関を同じ敷地に集めることで、患者さまは一度に複数の診療科を受診できます。
先生方にとっても、施設共有によるコスト削減や集患効果につながります。
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まずはヒアリングにて、理想のクリニック像をお聞かせください。
まとめ
本記事では、皮膚科開業の資金・年収の実態から、4つの失敗パターンと、それらを回避するための対策などを解説しました。
初期段階で過大な設備投資を避け、黒字化までの資金繰りに余裕を持たせること、そして医療広告ガイドラインなど実務的なルールを押さえておくことが、安定した経営の土台となります。
資金計画や立地選定などのやるべきタスクを、先生お一人で背負い込む必要はありません。
開業準備に不安を感じる場合は、ぜひ「開業コンサルタント」をパートナーとしてご活用ください。
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よくある質問
Q. 皮膚科はどれくらいの資金で開業できますか?
テナントで保険診療中心なら約4,000万〜6,000万円、美容皮膚科向けの機器を複数導入する場合は約6,000万〜1億円が目安です。
戸建ての場合はさらに建築費用がかかります。全体の2割を自己資金として用意するのが理想的です。
Q. 皮膚科は儲からないって本当?
保険診療と自由診療の組み合わせ方や患者数の確保によって、収益性は大きく変わります。
「儲からない」と言われるのは保険診療の単価が低く、十分な患者数を確保できないと固定費赤字に陥りやすいためです。
逆に言えば、立地と診療時間の設定を間違えず、必要に応じて単価の高い自由診療を組み合わせることで、黒字収益を出せるでしょう。
Q. 医療広告ガイドラインとは?違反したらどうなる?
患者を不当な広告から守るために厚生労働省が定めたルールです。誇大広告や比較優良広告、説明不足のビフォーアフター写真などが厳しく規制されています。
違反した場合、行政指導や是正命令の対象となり、従わない場合は罰則やクリニック名の公表といったペナルティが科される恐れがあります。
違反しないために、広告を出す前のガイドラインチェックを必須で行いましょう。