勤務医としてのキャリアを積み、そろそろ「独立」を考え始めた。
少し調べてみたけど、やるべきタスクが多すぎる。
勤務医を続けながら準備を進められるだろうか?
多くの先生方が、開業という人生の大きな転機を前にして、こうした不安を抱えています。クリニック開業の準備期間は、一般的に1年〜2年ほど。
その間に行うべきタスクは、物件探し、資金調達、内装工事、スタッフ採用、行政手続きなど多岐にわたり、手続きを間違えると「開業日が遅れる」「予算が足りなくなる」といった問題が立ちはだかります。
本記事では、クリニック開業の流れを大きく「5つのフェーズ」に整理しました。まずは全体像を先に掴み、優先順位を把握して開業の一歩を踏み出しましょう。
【全体像】クリニック開業の5フェーズ
まずは全体像を把握しましょう。開業準備をシンプルに捉えると、大きく以下5つのフェーズに分けられます。
【1】 コンセプトを決める
【2】 物件を決める
【3】 資金を調達する
【4】 クリニックの中身を作る
【5】 開業の申請をする
もちろん細かいタスクはありますが、やっていることは上記の5点と押さえておくと迷いが少なくなります。
それでは、次の章から各フェーズのタスクについて説明します。
1. コンセプトを決める
開業準備は物件や資金の話から始めたくなりますが、最初に取り組むべきは「どんなクリニックをつくるのか」というコンセプト設計です。
コンセプトが定まらないまま進むと、立地選びも設備投資も採用方針もブレてしまい、あとから「やっぱり違った」となって大きな手戻りが起こってしまいます。
ここでは、開業の軸となる「目的」と「診療内容」を整理し、後の選択がスムーズになる考え方を解説します。
開業の「目的」を明確にする
まず最初にやるべきことは、「なぜ自分は開業したいのか」をはっきり言葉にすることです。収入を増やしたいのか、診療方針を自分で決めたいのか、家族との時間を大切にしたいのか。
どれも正解ですが、ここが曖昧なまま進むと、後の選択がすべて不安定になります。開業は選択の連続なので、「迷ったときに立ち返る軸」を最初に作っておくことが大切です。
【POINT】
・なぜ開業したいのか?
・何を実現したいのか?
・収入・時間・やりがいの優先順位は?
⇒ 自分に問いを立てて、開業の目的を言語化する
コンセプトに沿って診療内容を決める
次に考えるのは、どんな診療を、誰に向けて行うのかという点です。
勤務医時代は病院の方針に合わせて診療してきたと思いますが、開業すると「この病院では何が診れるのか」を明確にする必要があります。患者さんが「この先生に診てもらいたい」と思う理由を作ることが、結果的に集患につながるためです。
何でも診る医院よりも、「こういう悩みならここ」と思い浮かべてもらえる医院のほうが長く安定します。
【POINT】
★ターゲット
・「働く世代」なら駅前で夜間診療
・「高齢者」ならバリアフリーで住宅街
⇒ 誰の、どんな困りごとを解決するかで集患力が決まる
★差別化
・「専門性の高さ」で売る?
・「地域のかかりつけ医」を目指す?
⇒ 患者さんが他のクリニックではなく、先生を選ぶ理由をつくる
★事業規模
・年収重視でバリバリ稼ぐ?
・家族との時間を優先する?
⇒ 必要な開業資金やスタッフの人数が変わる
2. 物件を決める
コンセプトという設計図ができたら、それを建てるための土地(物件)を探します。物件選びは、一度決めてしまうと後戻りができないリスクの高い工程のため「診療圏調査」など客観的なデータに基づいて判断する必要があります。
物件形態を決める
まずは物件のタイプを選びます。大きく分けて、ビルの一室などを借りる「テナント開業」と、土地から建物を建てる「戸建て開業」があります。テナント開業は内装工事だけで済むため初期費用を抑えられますが、家賃がかかり続けます。
一方、戸建て開業は初期費用と時間はかかりますが、設計の自由度が高く、将来的に土地と建物が資産になるというメリットがあります。ご自身の資金力と事業計画に合わせて選択しましょう。
【POINT】
・テナント or 戸建て?
・テナントは初期費用が抑えられるが、戸建ては自由度が高く資産になる
契約条件と工事条件をチェック
物件の契約時には、賃料だけでなく工事区分や設備条件を確認しましょう。例えば内装工事の際、どこまでが貸主負担で、どこからが借主負担になるのか(工事区分)は物件によって異なります。
また、医療機器を動かすのに十分な電気容量や給排水設備が整っているか、退去時の原状回復費用はどの程度見込まれるかなど、契約前に専門家の目を交えて詳細をチェックすることが重要です。
【POINT】
・工事区分(どこまで貸主負担でどこから借主負担か)
・電気容量・給排水・空調
・原状回復(退去時の費用負担)
診療圏調査(マーケティング)を行う
候補地が見つかったら、必ずデータに基づいた診療圏調査を行いましょう。半径1km圏内などの診療圏にどのくらいの人口がいるのか、競合となるクリニックはどこにあり、どの程度の患者数を持っているのかを調査します。
「良い医者がいれば患者は来る」という感覚だけでなく、「そこに患者がいるか」「競合に勝てる見込みがあるか」を数字で冷静に判断することが、失敗しない物件選びにつながります。
なお、メディカルシステムネットワークでは、開業を目指す先生へ向けて無料で診療圏調査を行っています。以下のページからご確認ください。
3. 資金を調達する
場所が決まったら、それを実現するための資金を確保します。銀行はこの事業が利益を生み出し、確実に返済できるかという実現可能性を審査します。そのため、熱意だけでなく、説得力のある数字を用意する必要があります。
事業計画書を作成する
事業計画書は、資金調達を進めるうえでの最重要書類です。金融機関は、先生の診療技術そのものよりも「開業後に事業として安定して回り、返済できる見込みがあるか」を見ています。その判断の土台になるのが事業計画書です。
「1日あたり何人が来院する想定か」「患者単価はいくらか」「月に何日診療するか」といった前提から収支を組み立て、売上と費用の見通しを数字で示します。
ここで重要なのは「根拠のある数字」にすることです。診療圏調査や診療体制(予約枠・診療キャパ)と整合しているほど、計画の信頼性は上がります。
また、開業直後は想定どおりに患者数が伸びないこともあるため、リスクを織り込んだシナリオ(控えめな立ち上がり)も準備しておくと、現実的な計画として評価されやすくなります。
【POINT】
・診療圏調査などを活用して根拠のある数字で説明する
金融機関の選定・交渉
融資は、1つの金融機関だけに相談して決めるのではなく、複数の選択肢を比較したうえで条件交渉を進めるのが基本です。地銀・信金・政策公庫など、金融機関によって得意分野や審査の見方、提示される条件が異なるためです。
比較する際は金利だけでなく、返済期間、据置期間(開業直後の返済を一定期間止められるか)、保証や担保の条件などを総合的に見ましょう。開業直後は支出が先行しやすいため、据置の有無は資金繰りに大きく影響します。
また、交渉の場では「この医院はどうやって患者を集め、どうやって回し、どうやって返すか」を一貫して説明できることが重要です。物件・診療圏調査・事業計画がつながっているほど、金融機関側の不安が減り、条件面でも有利に進めやすくなります。
【POINT】
・複数の金融機関を比較検討
・金利の他にも返済期間、据置期間、保証、担保の条件をチェック
運転資金の確保
開業資金で忘れてはならないのが「運転資金(手元の現金)」です。開業直後は赤字が続くことが一般的ですし、保険診療の売上が実際に入金されるのは2~3ヶ月後になります。
その間のスタッフ給与や家賃を支払うため、設備投資とは別に、最低でも半年〜1年分の生活費を含めた運転資金を確保しておくことで、「黒字倒産」のリスクを回避します。
【POINT】
・保険診療の入金は2~3ヶ月後(その間は売上がない)
・「黒字倒産」を防ぐため、半年〜1年分の生活費を含めた資金を用意
★関連記事:クリニック開業にかかる資金の目安とは?診療科目別に紹介します
4. クリニックの中身を作る
資金の目処が立ったら、いよいよクリニックの中身を作っていくフェーズに入ります。ここはタスクが同時多発的に進むため、最も忙しい時期となります。大きく分けて「ハード(建物・機器)」と「ソフト(人・集患)」の準備が必要です。
設計・内装工事
まず取り組むのが、設計と内装工事です。内装は見た目を整える作業というより、日々の診療をスムーズに回すための「動線設計」が本質です。
受付から待合、診察室、処置室、会計までの流れが詰まらないか、スタッフ動線が交差してストレスが増えないか、発熱患者の動線をどう分けるか、といった点が運営のしやすさを決めます。
開業後にレイアウトを大きく変えるのは難しいため、将来の増患やスタッフ増員も見据えておく視点も持っておきましょう。
【POINT】
・内装は「業務がストップしない動線」を優先
・将来的な規模もある程度見越しておく
医療機器の選定
次に、診療内容に合わせて医療機器を選定します。ここで大切なのは「買いたい機器」ではなく、「必要な診療を安全に回すために必要な機器」を基準にすることです。フルスペックを揃えると初期費用が膨らむだけでなく、運用や保守の手間が増えてしまうことがあります。
一方で、削りすぎると診療の質や効率が落ち、患者満足や回転にも影響します。そこで、必須の機器(ないと診療が成立しない)と、開業後に追加できる機器(患者数が増えてからでも良い)を分けて考えるのが現実的です。
また、購入かリースか、中古を活用するかなども含めて検討します。初期投資を抑えたい気持ちは自然ですが、保守体制や故障時対応、ランニングコストまで含めた「総コスト」で判断しましょう。
【POINT】
・「必須」と「後から追加」を分ける
・購入/リース/中古は、保守・故障対応・ランニングコストまで含めて比較
スタッフの採用・研修
「スタッフの質=クリニックの評判」と言っても過言ではありません。オープンの3〜4ヶ月前には求人を出し、面接を行いましょう。採用後、「ぶっつけ本番」でオープンするのはオペレーション上リスクが高すぎます。
あらかじめ電子カルテの操作や接遇マナー、緊急時の対応などを全員でシミュレーションしてから臨みましょう。
【POINT】
・スタッフの対応は口コミに直接つながる
・オープン前に受付〜会計の通し練習、電話・クレーム対応などの研修を実施する
広告・集患(マーケティング)
今は患者さんがスマホでクリニックを選ぶ時代です。開業前から公式サイトを公開してSEO(検索対策)を強めたり、Googleマップへの登録(MEO対策)を行ったりと、Web上の「認知」を広げておく必要があります。
開業直前には「内覧会」を開き、地域の方に院内の雰囲気や先生の人柄を知ってもらって認知の拡大を狙いましょう。
【POINT】
・ホームページはSEO対策込みで作成する
・内覧会の開催で地域にクリニックの存在を知ってもらう
5. 開業の申請をする
最後に、日本の医療制度に乗るための手続きを行います。ここではスケジュール管理が非常に重要です。提出期限を1日でも過ぎると、開業当日に保険証が使えない(全額自費診療になる)という致命的な事態を招く恐れがあります。メインとなる書類は以下の2つです。
保健所への「診療所開設届」
まずはクリニックとして「診療行為」を行えるようにするための手続きです。一般的には、内装工事が完了したタイミングで管轄の保健所に提出します。
提出後、保健所の担当者による「立入検査」が行われ、構造設備や安全管理体制に問題がないかチェックを受けます。これに合格して初めて、医療機関としての機能が認められるのです。
【POINT】
・診療所開設届を提出して合格しないと診療行為が行えない
厚生局への「保険医療機関指定申請」
保険医療機関指定申請は、患者さんが保険証を使って受診できるようにするための手続きです。これが間に合わないと開院日に保険診療を開始できず、結果として患者さんに全額自己負担をお願いする事態になりかねません。
この申請は月1回の締切で動くため、スケジュール管理が最重要になります。締切日は厚生局や事務所によって異なるため、開院日から逆算して「いつまでに何を揃えるか」を確定させておきましょう。
期限を過ぎると保険診療の開始が1ヶ月遅れるリスクがあるため、開院日を決める段階から申請の締切を基準に計画を組みます。
【POINT】
・保険医療機関指定申請は締切厳守
・締切日は厚生局や事務所によって異なるため要確認
その他の書類も多数
開業に伴う手続きは、保健所と厚生局だけで終わりません。診療科目や導入する設備、雇用するスタッフ数によって必要な届出が増えるため、早い段階で「自院に必要な手続き一覧」を作っておくことが重要です。
例えば保健所関連ではX線装置の届出などが関係することがありますし、スタッフを雇用するなら社会保険・雇用保険の手続きが発生します。税務署への開業届や青色申告の届出も、開業後の税務処理をスムーズにするうえで欠かせません。
ここまでクリニック開業の流れを説明してきましたが、タスクの多さに驚いた先生もいらっしゃるのではないでしょうか。現実的な問題として、物件の選定や書類の準備、手続きのすべてを先生がお一人でこなすのは至難の業です。
次に、進め方についての相談先やサポートはどこで受けられるかを説明します。
クリニック開業の進め方はどこに相談できる?
相談先は「開業のどの部分について相談したいか」で考えると、以下のように分けられます。
■ 制度・地域情報を知りたい ⇒ 医師会
■ 資金面を具体化したい ⇒ 金融機関
■ 実務を固めたい ⇒ 税理士・社労士
■ リアルな体験談を聞きたい ⇒ 先輩開業医
■ 開業全体の段取りをまとめて相談したい ⇒ 開業コンサルタント
地域医療の状況や制度面については、医師会が中立的な立場で情報を提供してくれます。資金計画や融資条件について具体的に検討したい場合は、金融機関に相談することで事業としての現実性をチェック可能。
また、開業後の税務やスタッフ雇用など、実務面を固めたい段階では税理士や社労士が心強い存在です。先輩開業医からは成功談だけでなく失敗談も含めたリアルな経験を聞くことができ、判断材料として役立つでしょう。
「開業の流れがわからない」「優先順位が知りたい」といったように進め方そのものに不安がある場合は、全体をフォローしてくれる開業コンサルタントがおすすめです。診療圏調査や融資書類の準備、金融機関との交渉、返済シミュレーションまで一貫したサポートを受けられます。
クリニックの開業なら『メディカルシステムネットワーク』にお任せください
メディカルシステムネットワークには、全国展開している調剤薬局事業のネットワークを活かして、医師と共に「地域医療」を創り上げるというビジョンがあります。
そのため、クリニックの開業という夢を無料のコンサルティングでサポートしております。
★Point 01 コンサルタント料金は「無料」
開業のコンサルタント費用はかかりません。
「地域に根差した医療を先生と一緒につくる」というビジョンのもと、調剤薬局の併設も視野に入れながら支援いたします。
★Point 02 開業準備のすべてを任せられる「ワンストップ体制」
開業には資金計画・設計・広告・求人など多くの準備が必要です。
担当者がパートナーとなり、専門業者と連携しながら事業計画から採用までトータルで支援いたします。
★Point 03 開業後も続く「アフターフォロー」
開業した後もサポートは続きます。
健康セミナーや講演会の開催支援など集患・増患につながる企画をご提案。医業承継を考えるタイミングでの準備もサポートします。
★Point 04 集患に有利な「メディカルモール」も守備範囲
複数の医療機関を同じ敷地に集めることで、患者さんは一度に複数の診療科を受診可能。
先生方にとっては施設共有によるコスト削減や集患効果で効率的な経営ができます。
★Point 05 「診療圏調査」を無料で実施
独自のデータベースを基に、診療圏のマーケティング調査を無料でご提供。調査だけのご相談も可能です。
開業準備から開設後の医院経営まで、調剤薬局事業で培ったノウハウを活かしてサポートいたします。まずはヒアリングにて、理想のクリニック像をお聞かせください。
まとめ
今回は、クリニック開業の流れを「コンセプト」「物件」「資金」「クリニックの中身」「申請」の5フェーズで整理し、それぞれでやるべきことを解説しました。開業はタスクが多い分、全体像を先に掴み、フェーズごとに意思決定を積み上げていくほど、判断がブレにくくなります。
特に重要なのは、コンセプトを軸にして物件・資金・内装・採用・集患までを同じ方向に揃えること、そして申請は締切から逆算して進めることです。
しかし、すべての判断と実務を先生お一人で抱え込む必要はありません。物件選びや資金調達、煩雑な手続きに時間を奪われ、肝心の「どんな医療を提供したいか」という想いがおろそかになっては本末転倒。
メディカルシステムネットワークでは、先生の伴走者として開業の構想段階からオープン後の経営までをトータルでサポートいたします。まずは無料相談にて、先生の思い描くクリニックのイメージをお聞かせください。