勤務医時代は、成長するまで勤めさせてもらえる環境や教えてもらえる環境があった事に感謝していました。一方で、技術や経験がある程度身についてくると、自分の理想とする医師像のようなものが出来上がってくる時期でもありました。

　「自分ならこうやりたい」という気持ちを持ちながらも組織にいる以上は、その方針に合わせなきゃいけない事が多くある中で、より強く「自分の医療をやってみたい」という気持ちが大きくなっていきました。

　それが、自分の医療方針が出せるような場でチャレンジしてみたいと思うようになった大きなきっかけですね。

　地方の病院から札幌に戻ってきた時に、このまま勤務医として勤めていたら医療に対してのストレスやモヤモヤ感が続いていくと思い、開業をする2～3年前から考えはじめました。

　私は生まれも育ちも札幌であり、開業するのであれば地元への医療貢献を意識していました。勤務医時代は医局に所属していた事もあり、開業する時にはご迷惑をおかけしない形にしたいと考えました。

　ただ札幌市内での開業については、お世話になった先輩の開業地が近いなど診療圏の問題もあることから、札幌近郊を中心に物件を探している中で見つけたのが今の千歳のメディカルモールでした。

　千歳市の基幹病院である千歳市民病院に医局から十分な医師数を送れていなかった事や、私が千歳に行くことで病院と連携を取りながら診療できれば、自分やお世話になった医局にとってもメリットがあるのではないかと考え、最終的にこの場所に決めました。

　開業をするとなった時に開業準備に必要なことはたくさんありました。

　特に資金繰りのことや、資金調達の方法、開業するにあたっての申請や届出の部分については全くわかっておりませんでした。しかし、御社に開業支援をお願いした事で、トラブルなくスムーズに進み、担当者の方もたどたどしさがなく「これは任せてください」「これが必要ですよ」というご教示、ご支援を頂けた事など、本当にすべて安心できましたね。

　勤務医時代は、組織の中で必要とされる診療をするといった医療が中心でしたが、実際に開業医になってみると、思っていたよりも医療以外の事で気力、体力を消耗する事が多かったです。

　具体的には、スタッフの確保に苦労したり、思うように集患ができない時期があったりなど、経済的に厳しい時期もあったので、精神的に追われている感覚がありました。

　一方で、開業した時の理念だった「やりがい」を意識し、ただこなすのではなく医療の質などを考え、自分がやりたい医療をしていく中、徐々に時間的な余裕や経済的余裕が出来てきた事で、勤務医時代にはなかった気持ちの安定感と達成感を得ることが出来ました。

　そこが勤務医と大きく違う点ですかね。

　一番は労務管理ですね。

　スタッフの入れ替わりにより、医療を安定供給させるための体制を確保するのが少し困りました。しかも、千歳は人口10万人ほどの街なので、札幌とは違いスタッフ確保の難しさがあると思います。

　他には、医療モール全体で使っている医療システムのトラブルの対処に苦慮したこともありましたね。

　病院というのは、患者様からのイメージとして、受付、事務、医療すべて同じ組織と見られていると思います。

　千歳のメディカルモールは受付業務を御社に委託しており、厳密には私の診療所と同一の組織ではないですが、患者様から「いいね」と思ってもらえるような受付対応など、病院と一緒だと思われる部分を一生懸命意識して取り組んでもらえていると思います。

　受付とは病院の顔となる重要なポジションだと思っておりますし、職員を確保するのも大変な中で、患者様に合わせた表情で接してくれるなどの医療接遇にはとても感謝しています。

　自分はパラシュート開業だった事もあって、都市部ではない町で開業するとなると、他科、同科に関わらず、周囲の医療機関との連携を意識してやっていくということが不可欠だと思います。

　もう一つは、開業すると言っても十分な知識がないので、かかる費用、必要な申請や届出の勉強、加えて医療圏調査は必要だと思います。開業する前からそういった知識がある人は少ないと思いますので、信頼できるコンサルタントを選択し、しっかり教えていただきながら進める必要はあると思いますね。

　開業を希望される方へのアドバイスとしては、理念として「根気強く、気長に頑張っていれば必ず満足する医療提供に繋がる」ですね。

　開業当初には、知らなかった事、金銭面の事、労務管理の事等々、分からない事がたくさんあるので苦労すると思いますが、苦悩を乗り越えた先、最後には開業しようと思った時の「理念」に必ず近づけると思いますので頑張って欲しいですね。